それは2016年3月19日、久しぶりに親友の千花と飲みに行ったときの出来事だった。

その日千花はやたらとお酒を進めてくるし、
料理もわたしが好きなものばかり。

なんだか怪しいとだんだん思い始めてきた頃に、
千花がそういえば、と軽い調子で切り出した。


千花千花

あたし、6月に結婚式するんだけど

悠

知ってるけど。
っていうか、呼ばれてるけど


何を今さら。
あれ、もしかしておめでとうって言ってなかったっけ??
いや、電話で告げられたときに行ったはずだし、
そのあとも何回か会っているから、そのどこかで祝福したはず。

不思議に思って千花を見ると、
彼女は見惚れるほどの満面の笑みでにっこりと小首を傾げた。


千花千花

うん、それでね。
二次会の幹事を悠ちゃんにお願いしたいなって

悠

? 誰か降りたの?

確か結婚式は6月の第一日曜日だったはず。
だったら結婚式の二次会もおそらく同日のはずで、あと二ヶ月半もなかった。

とはいえ、二次会の幹事は激務なことで有名だ。
四月異動で勤務地が変わったり、職務内容が変わったりと
頼んでいた人のうち、誰かが仕事の都合でできなくなったのかと、と思いきや。


千花千花

ううん、まだ誰にも頼んでなかったんだよね。
忘れてた(*ノ▽ノ)

悠

マジか

千花千花

マジです(*´・ω・`)b


千花は、ピースサインでも繰り出しそうなほど軽やかに頷く。
わたしはぎょっと顔を引き攣らせた。

誰にも頼んでなかったってことは、準備はゼロから??


悠

いや、無理。
だってあと二ヶ月半もないじゃん

千花千花

だからね、フリーランスの悠ちゃんにお願いしたいなって

悠

確かに時間はある程度自由になるけど‥‥‥会場は決まってるの?

千花千花

まだ

悠

おーい
ジューンブライドでしかも大安の日曜日
今さら空いてる会場なんかないよー!

千花千花

そこをなんとか

悠

なるわけないじゃん

千花千花

居酒屋とかでもいいし!

悠

何人呼ぶつもり?
大部屋あるお店とかあったっけ?

千花千花

披露宴に招待してない人中心で60人くらい

悠

‥‥‥マジか

千花千花

マジっす

悠

なんでそんなに

千花千花

ともくん(新郎)が無駄に顔広くて

悠

あー‥‥‥

千花千花

悠ちゃんしか頼めないの!!
全部任せるんで、お願いします!!!

そんなに頼まれたら断れない、というかそれを分かって頼んでるなこいつ。
そうは思うものの長い付き合いの友人だ。
おめでたいことだし、確かにフリーになって時間の融通は利く。

でも結婚式の二次会なんて今までただ出席したことしかないし、
どれも適当な感じで流してきたから会の内容はほとんど覚えていない。

定番はビンゴ。むしろ二次会でビンゴ以外のゲームはやったことない。
でもビンゴなら勝手は分かるかな。
景品を用意して‥‥‥と、その前に会場の準備か。
っていうか、式場どこだったっけ???

と、5分くらい逡巡したあと、わたしはハッと嫌な予感を覚えた。


悠

‥‥‥ねえ、まさかわたし一人じゃないよね??

千花千花

え?

悠

え?
じゃなくて

千花千花

や、でもほら。
悠ちゃん一人の方が仕事はかどるってフリーランスになったじゃん?

悠

無理無理無理無理!


それとこれとは。
そもそもわたし、表に立つ人間じゃないから。
司会とか向いてないっていうか無理、やりたくない。
司会だけは本っ当に無理!!


悠

せめて司会ともう一人くらい人出して!
旦那顔広いでしょ!?

千花千花

そういうもの?

悠

そういうもの!

千花千花

はーい(。・_・。)ノ


おとぼけ千花ちゃん、健在である。

中学校のときからだから、もう10年以上の付き合いだ。
わたしは彼女の性格を分かっているし、
千花の方もわたしの性格を分かり切っている。

ちょっとのんびりしている千花の頼み(という名のフォローというか尻ぬぐい)を
断ることなんて、わたしには最初から無理難題というものだ。

わたしは腹を括った。

そしてこの日から結婚式当日までの二ヶ月半弱、それは戦いの日々となったのだ。